双葉山の二枚腰

双葉山の二枚腰安定したバランスのいい立ち方ができれば、ヴァイオリンのボーイングにも良いのですが、昨日ちょっと面白い話を聞きました。あるバイオリンの生徒さんは、ときどきヨットスクールに通っており、そこから帰ってくるとヴァイオリンの音もよい、ということでした。

サーファーもそうですが、確かに不安定な海の上で始終バランスをとっていれば、自然と安定した立ち方をするようになるのでしょう。(軍隊経験もある「軍人」クライスラーの立ち姿も、見事です。)

この話で思い出したのは、昭和の大横綱、前人未到の69連勝の記録をもつ双葉山の「二枚腰」の話です。双葉山は、とにかく腰に粘りがあったとのことです。

まだ体力がついてないうちでしたが、決まり手で特に多いのが「打棄り(うっちゃり)」なのです。打棄りというのは、相手に寄り切られそうになって、それをかわすわけですが、双葉山は「いっぺん腰がくずれても、もう一つの腰がのこっている」という風に表現しています。それは「二枚腰」といわれました。

その双葉山は、16歳で相撲取りとして入門するまでは郷里の大分で船乗りをしていたのです。私の愛読書である双葉山の「大相撲求道録」から、こんな記述をみつけました。

「船の動揺によって自然に腰を鍛錬することができたということです。これは自分自身で意識していたわけではありませんが、後で人からいわれてみると、「なるほど」と肯かれる節もあるのです。なにしろ当時のわたしとしてみれば、陸上の生活よりも、海上の生活のほうが、時間的にも長かったわけですから、知らず識らずのあいだに、ずいぶんと腰の力を鍛えられ、これが後日の土俵生活のうえに、少なからず役だったものと思われます。」(「大相撲求道録」P.34より)

「その意味で、わたしは体格や力の点では、力士として抜群ではなかったのですが、もしいくらかでも取柄があったとすれば、少年時代の海上生活で身につけることのできた「腰の力」―詳しくいえば腰から下の安定感、つまり小舟で櫓をこぐときの腰と足の爪先、とくに親指との「力」のコンビネーション―がものをいったことで、腰の重い点ではいささか自信もあったわけです。」(「大相撲求道録」P.117より)

海の上での生活は、正しく「立つ」ということにおいてヒントがありそうです。船の上でヴァイオリンを毎日練習していたら、よい姿勢、よい音になっていきそうですね。(塩水で楽器にはいけませんが…)

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